「債務整理を考えているけれど、自分は対象になるのだろうか」
「債務整理できない人もいると聞いたけど、具体的にどんなケースなの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
借金問題の解決策として有効な債務整理ですが、残念ながら全ての方が利用できるわけではありません。
この記事では、債務整理ができないパターンや、対象とならない債務整理できない借金の種類、そして万が一債務整理の失敗談として語られるような事態を避けるためのポイントについて詳しく解説します。
また、債務整理でどこまで減らせるのか、もし債務整理を1回遅れたらどうなるのかといった具体的な疑問にもお答えします。
特に、任意整理できないパターンや、債権者が任意整理に応じない場合どうなるのか、あるいは任意整理に応じない方針の業者への対応、さらには個人再生ができないケースはどのようなものかについても掘り下げていきますので、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
この記事を読むことで、あなたは以下の点について理解を深めることができます。
記事のポイント
- 債務整理が利用できない具体的なケースとその理由
- 各種債務整理手続きが利用できない条件と、それぞれの対処法
- 債務整理手続きを進める上での注意点や、万が一返済が遅れた場合の影響
- ご自身の状況に合った借金問題の解決策を見つけるためのヒント
債務整理できない人の代表的ケース
- 債務整理ができないパターンとは何か
- 解説!債務整理できない借金の種類
- 知っておきたい債務整理の失敗談
- 債務整理でどこまで減らせるかの実態
債務整理ができないパターンとは何か
債務整理を検討しても、残念ながら手続きを利用できない、あるいは利用が難しいパターンが存在します。
まず考えられるのは、安定した収入がない場合です。
任意整理や個人再生では、手続き後に分割で返済を続ける必要があるため、定期的な収入が見込めなければ和解や再生計画の認可が困難になります。
また、借金の総額が極端に少ない、または逆にあまりにも多すぎる場合も、選択できる手続きが限られたり、そもそも債務整理のメリットが少なかったりすることがあります。
例えば、少額の借金であれば、弁護士や司法書士に支払う費用の方が高くなってしまう可能性も考慮しなくてはなりません。
さらに、過去7年以内に自己破産や個人再生(給与所得者等再生やハードシップ免責)を利用して免責許可を得ている場合、再度同じ手続きを利用するには期間を空ける必要があります。
これも債務整理ができないパターンの一つと言えるでしょう。
債権者がそもそも任意整理の交渉に応じない方針である場合や、提示される和解条件が非常に厳しい場合も、任意整理という形での解決は難しくなります。
このように、債務整理ができない、または難しいパターンはいくつかあり、個々の状況によって最適な対処法も異なります。
ご自身の状況がどのパターンに当てはまる可能性があるのか、専門家へ相談して正確に把握することが問題解決への第一歩となります。
解説!債務整理できない借金の種類
債務整理手続きを行っても、全ての借金や支払いが減額されたり、免除されたりするわけではありません。
支払い義務が免除されない特定の債務を「非免責債権」と呼び、これらは債務整理の対象外となるため注意が必要です。
代表的な非免責債権としては、以下のようなものが挙げられます。
- 税金や社会保険料: 所得税、住民税、固定資産税などの税金や、国民健康保険料、国民年金保険料、介護保険料などは、自己破産をしても支払い義務が免除されません。滞納している場合は、役所と相談して分納などの支払い計画を立てる必要があります。
- 下水道料金: 水道光熱費のうち、上水道料金は自己破産で免責の対象となりますが、下水道料金は税金と同様の扱いとなり、免責されません。
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金: 例えば、詐欺や横領など、相手を害する意図で行った不法行為による損害賠償金は免責の対象外です。ただし、通常の交通事故による損害賠償金などは、故意や重過失がなければ免責される可能性があります。
- 故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償金: 暴行による治療費や慰謝料などが該当します。
- 養育費や婚姻費用: 親族間の扶養義務に基づく費用(例:子供の養育費、別居中の配偶者への婚姻費用など)は、債務整理をしても支払い義務はなくなりません。
- 従業員の給与: 個人事業主などが従業員を雇用していた場合、未払いの給与は免責されません。
- 罰金等: 交通違反の反則金や刑事罰としての罰金なども、債務整理の対象にはなりません。
- 債権者名簿に意図的に記載しなかった債権: 自己破産や個人再生の手続きでは、全ての債権者を裁判所に申告する必要があります。もし意図的に特定の借金を隠していた場合、その借金は免責されない可能性があります。
これらの非免責債権に該当する借金が多い場合は、債務整理を行っても期待したほどの負担軽減効果が得られないことも考えられます。
そのため、ご自身の借金の中に非免責債権が含まれていないか、事前にしっかりと確認することが大切です。
専門家に相談すれば、どの借金が対象になるのか、非免責債権への対処法はどうすればよいのか、といった点についても具体的なアドバイスを受けられます。
知っておきたい債務整理の失敗談
債務整理は借金問題の有効な解決策となり得ますが、手続きの進め方や状況によっては、期待した結果が得られず「失敗した」と感じてしまうケースも残念ながら存在します。
どのような場合に失敗しやすいのか、事前に知っておくことで対策を講じることが可能です。
任意整理における失敗談
任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや分割払いの期間延長などを目指す手続きです。
この手続きでよく聞かれる失敗談としては、まず「和解後の返済が続けられなくなった」というケースが挙げられます。
任意整理では元金自体の減額は原則として難しく、3~5年程度の分割返済計画を立てます。
しかし、当初の計画時に収入状況を楽観視しすぎたり、手続き後に予期せぬ失業や病気で収入が減少したりすると、返済が滞ってしまうことがあります。
返済が2回以上遅れると、一括請求を受けるリスクも生じます。
また、「そもそも債権者が和解に応じてくれなかった」または「提示された和解条件が厳しすぎた」というのも失敗と感じやすいパターンです。
全ての金融機関が任意整理に協力的とは限りません。
特に、取引期間が短い場合や、一度も返済していないようなケースでは、交渉が難航しがちです。
さらに、「依頼した専門家の経験や交渉力に問題があった」と感じるケースもあります。
任意整理は交渉事であるため、専門家のスキルによって結果が左右されることもあり得ます。
実績の少ない専門家に依頼してしまい、不利な条件で和解せざるを得なかったという状況は避けたいところです。
自己破産・個人再生における失敗談
自己破産や個人再生は裁判所を介する法的な手続きですが、こちらも失敗に至るケースがあります。
自己破産では、「免責不許可事由に該当してしまい、借金が免除されなかった」というケースです。
ギャンブルや浪費による借金、財産隠し、裁判所への虚偽申告などは免責不許可事由にあたり、原則として免責が認められません。
ただし、裁判所の裁量で免責が許可される「裁量免責」の制度もあります。
個人再生では、「再生計画案が認可されなかった」または「再生計画通りの返済ができなかった」という失敗談があります。
再生計画案の遂行可能性が低いと判断されたり、債権者の多数が反対したりすると認可されません。
また、認可されても、計画された返済を継続できなければ、再生計画が取り消されることもあります。
これらの失敗談を避けるためには、まずご自身の状況を正確に把握し、無理のない計画を立てることが求められます。
そして、債務整理に詳しい信頼できる専門家を選び、手続きのメリットだけでなくデメリットやリスクについても十分に説明を受けることが大切です。
債務整理でどこまで減らせるかの実態
債務整理と一言で言っても、その種類によって借金をどれくらい減らせるか、あるいは免除されるかの度合いは大きく異なります。
ご自身の状況や希望に応じて適切な手続きを選択するために、各手続きで期待できる減額効果を理解しておくことは非常に大切です。
任意整理の場合
任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、主に将来発生する利息(将来利息)や、すでに発生している遅延損害金をカットまたは減額してもらうことを目指す手続きです。
原則として、借金の元金自体が減額されることはありません。
例えば、金利15%で100万円を借りていて、毎月3万円ずつ返済している場合、完済までには多くの利息を支払うことになります。
任意整理が成功し、将来利息が全額カットされれば、残っている元金のみを3~5年程度の分割で返済していくことになります。
これにより、毎月の返済額や総返済額を減らす効果が期待できます。
ただし、カットできる利息の幅や分割回数は、債権者との交渉次第であり、必ずしも希望通りになるとは限りません。
個人再生の場合
個人再生は、裁判所に申し立てを行い、再生計画の認可を得ることで、借金を大幅に減額できる可能性がある手続きです。
減額される割合は、借金の総額や保有している財産の価額によって法律で基準が定められています。
一般的に、住宅ローンを除いた借金総額に応じて、以下のように減額される可能性があります。
- 100万円未満:減額なし(全額返済)
- 100万円以上500万円以下:100万円まで減額
- 500万円を超え1500万円以下:借金額の5分の1まで減額
- 1500万円を超え3000万円以下:300万円まで減額
- 3000万円を超え5000万円以下:借金額の10分の1まで減額
ただし、これはあくまで最低弁済額の基準であり、所有している財産の総額(清算価値)がこの基準を上回る場合は、その清算価値相当額までは返済する必要があります(清算価値保障原則)。
減額された借金は、原則として3年間(最長5年間)で分割して返済していきます。
住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンはそのまま支払い続けながら、他の借金を減額することも可能です。
自己破産の場合
自己破産は、裁判所に支払い不能であることを認めてもらい、免責許可決定を得ることで、非免責債権を除く全ての借金の支払い義務が免除される手続きです。
つまり、原則として借金はゼロになります。
これが自己破産の最大のメリットと言えるでしょう。
ただし、生活に必要な最低限の財産(自由財産)を除き、一定価値以上の財産(不動産、車、預貯金など)は処分され、債権者への配当に充てられます。
また、免責不許可事由(ギャンブルや浪費など)があると、免責が認められない場合もあります。
このように、債務整理で借金がどこまで減らせるかは、選択する手続きによって大きく異なります。
ご自身の借金額、収入、財産状況、そして何よりも「どうしたいか(家を残したい、資格制限を避けたいなど)」を総合的に考慮し、専門家と相談しながら最適な手続きを選ぶことが重要です。
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手続き別に見る債務整理できない人
- 任意整理できないパターンの詳細
- 任意整理に応じない場合どうなる?
- 任意整理に応じない業者とその理由
- 個人再生ができないケースはこれだ
- 債務整理を1回遅れたらどうなるか
- 最終確認!債務整理 できない人の条件
任意整理できないパターンの詳細
任意整理は、債務整理の中でも比較的利用しやすく、柔軟な解決が期待できる手続きですが、残念ながら全ての場合で利用できるわけではありません。
以下に、任意整理ができない、あるいは難しい具体的なパターンを解説します。
まず、最も基本的な条件として、3年~5年程度で借金の元金を返済できる見込みがない場合です。
任意整理は将来利息をカットしてもらうことが主目的であり、元金自体は分割で返済していく必要があります。
そのため、安定した収入がなかったり、収入があっても借金額に対して返済に回せる余裕が極端に少なかったりすると、債権者との和解が成立しにくくなります。
弁護士や司法書士に依頼した段階で、収支状況の改善を求められることもあります。
次に、債権者が任意整理の交渉に一切応じない、または極めて厳しい和解条件を提示してくる場合です。
任意整理はあくまで当事者間の任意の交渉であるため、債権者には交渉に応じる法的な義務はありません。
一部の貸金業者の中には、社内方針として任意整理に応じない姿勢を取っているところや、「将来利息の全額カットは不可」「一括返済以外は認めない」「頭金として元金の一部を先に支払う必要がある」といった厳しい条件を提示してくるところもあります。
このような場合、交渉がまとまらず任意整理ができないことがあります。
また、借金に連帯保証人が設定されている場合や、担保(不動産など)が設定されている場合も注意が必要です。
任意整理をすると、債権者は主債務者が返済不能になったと判断し、連帯保証人に請求を行うのが一般的です。
連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、その借金を任意整理の対象から外すか、他の方法を検討する必要が出てきます。
同様に、担保付きの借金を任意整理すると、担保物が差し押さえられ、競売にかけられてしまう可能性があります。
大切な財産を手放したくない場合は、任意整理の対象とすることが難しくなります。
生活保護を受給中、または受給を検討している場合も、原則として任意整理は難しいと考えられます。
生活保護費は最低限度の生活を保障するためのものであり、借金の返済に充てることは基本的に認められていません。
ただし、生活保護費以外の収入があり、その収入の範囲内で返済や専門家への報酬支払いが可能であれば、ケースワーカーと相談の上で任意整理ができる可能性もゼロではありません。
既に給料の差押えを受けている状況では、債権者は強制的に借金を回収できる手段を確保しているため、わざわざ任意整理の交渉に応じてくれるメリットがありません。
この場合、給料差押えを止めるためには、自己破産や個人再生といった法的手続きを検討する必要が生じます。
最後に、依頼した弁護士や司法書士の任意整理に関する実績が乏しい場合も、交渉が難航し、結果的に任意整理ができない(あるいは不利な条件になる)可能性があります。
任意整理は交渉力が重要となるため、実績豊富な専門家を選ぶことが大切です。
これらのパターンに該当する場合でも、他の債務整理手続きを選択したり、状況を改善したりすることで解決の道が開けることもあります。
諦めずに専門家へ相談してみることをお勧めします。
任意整理に応じない場合どうなる?
任意整理は、債権者と債務者(またはその代理人である専門家)との間の話し合いによって、返済条件の変更を目指す手続きです。
法的な強制力はないため、債権者が任意整理の交渉に応じないというケースも残念ながらあり得ます。
では、もし債権者が任意整理に応じなかった場合、具体的にどのような状況になるのでしょうか。
まず、任意整理の交渉に応じてもらえなければ、将来利息のカットや長期の分割払いといった条件変更は実現しません。
つまり、引き続き契約通りの利息を含めた金額を、定められた期日までに返済し続ける必要があります。
返済が困難な状況が変わらないため、遅延が続けば遅延損害金が加算され、借金総額はさらに膨らんでいくことになります。
債権者が交渉に応じないまま返済の遅延が続くと、督促が厳しくなることが予想されます。
電話や郵便による督促に加え、場合によっては自宅訪問による取り立てが行われる可能性も否定できません。
精神的なプレッシャーは非常に大きなものとなるでしょう。
さらに状況が悪化し、長期間の滞納に至ると、債権者は法的手続きに移行する可能性があります。
具体的には、裁判所に訴訟を提起されたり、支払督促を申し立てられたりします。
裁判所から通知が届いても無視していると、債権者の主張が全面的に認められ、最終的には給料や預貯金、不動産などの財産が差し押さえられる強制執行に至るリスクがあります。
このように、一社でも任意整理に応じない債権者がいる場合、その債権者に対する借金問題は未解決のまま残ってしまいます。
もし、その債権者への返済が家計を圧迫し続けるようであれば、任意整理以外の債務整理手続き、例えば個人再生や自己破産を検討する必要が出てくるかもしれません。
ただし、全ての債権者が一律に任意整理に応じないわけではありません。
特定の業者だけが強硬な姿勢を示している場合、その業者を除いた他の債権者との間で任意整理を進めるという選択肢もあります。
しかし、それでも返済が困難な場合は、やはりより抜本的な解決策を模索する必要があるでしょう。
任意整理に応じてもらえないかもしれないと不安に感じる場合は、まずは債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談し、ご自身の状況や対象となる債権者の傾向などを踏まえた上で、最適な対応策についてアドバイスを受けることが肝要です。
任意整理に応じない業者とその理由
任意整理は債務者にとって返済負担を軽減できる有効な手段ですが、全ての金融業者が快く交渉に応じてくれるわけではありません。
中には、任意整理の申し出に対して強硬な姿勢を崩さず、交渉が難航する、あるいは全く応じないという業者も存在します。
なぜそのような業者がいるのか、その理由と背景について理解しておくことは、対策を考える上で役立ちます。
主な理由としては、まず業者側の社内方針が挙げられます。
「任意整理には原則応じない」という明確な方針を掲げている業者は、交渉のテーブルにつくこと自体が困難な場合があります。
これは、安易に減額や分割払いに応じると、他の債務者からも同様の要求が相次ぎ、収益が悪化することを懸念しているためと考えられます。
特に、経営体力があまりない中小の貸金業者や、特定のビジネスモデルを持つ業者に見られることがあります。
次に、債務者との過去の取引状況や現在の状況も影響します。
例えば、以下のようなケースでは、業者が任意整理に応じにくくなる傾向があります。
- 取引期間が極端に短い、または一度も返済実績がない場合: 貸し倒れリスクが高いと判断され、「最初から返済するつもりがなかったのではないか」と疑念を持たれやすいため、交渉が難航します。
- 以前にも任意整理や延滞を繰り返している場合: 債務者の返済能力や誠実さに対する信頼が低いため、再度条件交渉に応じることに消極的になります。
- 虚偽の申告をしていたことが発覚した場合: 信頼関係が根本から崩れるため、交渉は極めて困難になるでしょう。
- 債務者自身が交渉しようとしている場合: 法律の専門家ではない個人からの交渉には、最初から応じないというスタンスの業者もいます。これは、交渉がスムーズに進まないことや、債務者側が法的な知識に乏しいことを利用しようとする意図が透けて見える場合などを警戒しているためです。
また、業者にとって任意整理に応じるメリットが少ないと判断される場合も、交渉は進みにくくなります。
例えば、すでに裁判を起こして勝訴判決を得ている場合や、給料差押えなどの強制執行手続きが可能な状況にある場合、業者はわざわざ減額交渉に応じる必要性を感じません。
特定の業者が任意整理に応じないからといって、すぐに諦める必要はありません。
債務整理に強い弁護士や司法書士に依頼することで、個人では門前払いだった業者も交渉に応じてくれるケースがあります。
専門家は、各業者の傾向や過去の交渉事例を把握しており、粘り強く交渉を進めてくれることが期待できます。
もし、どうしても特定の業者が任意整理に応じない場合は、その業者だけを除いて他の借金を整理する方法や、個人再生・自己破産といった他の債務整理手続きに切り替えるといった対策も考えられます。
いずれにしても、専門家とよく相談し、ご自身の状況に最適な解決策を見つけることが大切です。
個人再生ができないケースはこれだ
個人再生は、裁判所の認可を得て借金を大幅に減額し、原則3年(最長5年)で分割返済していく手続きです。
住宅ローン返済中の自宅を残せる可能性があるなどメリットも大きいですが、誰でも利用できるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。
以下に、個人再生ができない、あるいは難しい主なケースを解説します。
まず、住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円を超えている場合です。
個人再生を利用できるのは、この金額以下の債務者に限られます。
事業性ローンなどで高額な負債を抱えている個人事業主の方などは、この上限額に注意が必要です。
次に、将来にわたり継続的または反復して収入を得る見込みがない場合です。
個人再生は、減額されたとはいえ借金を返済し続けることが前提の手続きです。
そのため、無職で収入のあてがない方や、収入が著しく不安定な方は、再生計画を遂行できないと判断され、手続きを進めることが難しくなります。
特に「給与所得者等再生」という手続きを利用する場合は、収入の変動幅が小さいことも求められます(過去2年間の年収変動が20%以内など)。
また、過去7年以内に自己破産の免責許可決定を受けている、または給与所得者等再生の再生計画認可決定やハードシップ免責を受けている場合は、再度個人再生を利用することができません。
期間を空ける必要があります。
個人再生手続きに非協力的な態度をとる場合も、手続きが頓挫する可能性があります。
例えば、裁判所や個人再生委員に対して虚偽の申告をしたり、財産を隠したり、必要な書類の提出を怠ったりすると、不誠実な申し立てとみなされ、棄却されることがあります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、小規模個人再生において、債権者の多数(頭数で半数以上、または債権額で総額の過半数)が再生計画案に反対した場合は、手続きを進めることができません。
ただし、給与所得者等再生にはこの同意要件はありません。
提出した再生計画案が法律の要件を満たしていない、または遂行可能性が極めて低いと裁判所に判断された場合も、認可されません。
例えば、返済額が法律で定められた最低弁済額を下回っていたり、収入状況から見て明らかに返済が困難な計画だったりする場合です。
裁判所によっては、申立て後に履行テスト(計画通りの積立ができるかを確認するテスト)が行われ、これがクリアできないと再生計画の認可が難しくなります。
多額の財産を保有している場合も、個人再生のメリットが薄れる、あるいは実質的に利用が難しくなることがあります。
個人再生では、保有する財産の総額(清算価値)以上の金額を弁済しなければならないというルール(清算価値保障原則)があります。
そのため、高価な財産を持っていると、減額後の弁済額が大きくなり、結果として返済が困難になる可能性があります。
これらのケースに該当する場合でも、他の債務整理手続きが適している場合や、状況を改善することで個人再生が可能になることもあります。
弁護士や司法書士などの専門家に相談し、ご自身の状況を正確に把握した上で、最適な方針を検討することが大切です。
債務整理を1回遅れたらどうなるか
債務整理、特に任意整理や個人再生の手続きが無事に終わり、和解契約や再生計画に基づいて返済を開始した後でも、予期せぬ事情で返済が遅れてしまうことは起こり得ます。
では、もし返済を1回遅れてしまった場合、具体的にどのような影響があるのでしょうか。
任意整理後の返済が1回遅れた場合
任意整理の和解契約では、通常「支払いを2回(または2ヶ月分)以上怠った場合には期限の利益を喪失し、残債務を一括で支払わなければならない」といった条項が盛り込まれています。
これは、2回以上の遅延で大きなペナルティが発生することを意味します。
したがって、1回目の遅延であれば、直ちに一括請求されたり、和解契約が即座に無効になったりする可能性は低いと言えます。
しかし、油断は禁物です。
1回遅れた時点で、まず債権者(貸金業者など)や、弁護士・司法書士に代理弁済を依頼している場合はその事務所から、支払いを促す連絡(電話や書面)が来るのが一般的です。
この連絡を無視せず、誠実に対応することが大切です。
もし、支払いが遅れた理由(急な出費があった、給料日がずれたなど)と、いつまでに支払えるかを正直に伝え、速やかに入金すれば、多くの場合、大きな問題には発展しません。
ただし、遅延した日数分の遅延損害金が加算される可能性はあります。
重要なのは、連絡を無視したり、支払いの遅れを放置したりしないことです。
1回の遅れであっても、それが繰り返されたり、連絡が取れなくなったりすると、債権者からの信頼を失い、2回目の遅延を待たずに厳しい対応を取られるリスクも高まります。
個人再生後の返済が1回遅れた場合
個人再生の再生計画に基づく返済も、決められた期日までに行う必要があります。
こちらも、1回の遅延で直ちに再生計画が取り消されるわけではありません。
しかし、再生計画には、一定期間返済が滞った場合に再生計画が取り消される旨の条項が含まれているのが通常です。
こちらも任意整理と同様、まずは裁判所や監督委員(選任されている場合)、または代理人の弁護士に連絡し、遅れた理由と今後の支払い意思を伝えることが重要です。
放置してしまうと、債権者から再生計画の取消しの申し立てがなされる可能性があります。
再生計画が取り消されると、減額された借金が元に戻り、一括請求を受けることになるため、状況は非常に深刻になります。
共通の対処法
いずれの手続き後であっても、返済が1回遅れそう、あるいは遅れてしまった場合は、以下の対応を心がけてください。
- 事前にわかる場合は、支払期日前に連絡する: 債権者または依頼した専門家に、支払いが遅れる旨と、いつ支払い可能かを伝えます。
- 遅れてしまった場合は、速やかに連絡し、誠実に対応する: 督促の連絡があれば無視せず、正直に状況を説明し、できるだけ早く入金します。
- 今後も返済が困難になりそうなら、早めに相談する: 一時的な遅れではなく、継続的に返済が難しくなる見込みであれば、放置せずに再度専門家に相談し、リスケジュール(再和解)や他の手続きへの移行などを検討する必要があります。
1回の遅延でも軽視せず、誠実な対応を心がけることが、その後の事態を悪化させないために非常に大切です。
総括:最終確認!債務整理できない人の条件
債務整理は借金問題に悩む多くの方にとって有効な解決策となり得ますが、残念ながら全ての方が無条件に利用できるわけではありません。
ここまで様々な角度から「債務整理ができない人」のパターンや理由について解説してきましたが、最後に改めて、どのような条件に該当すると債務整理が難しいのか、あるいは特定の手段が取れないのかをまとめて確認しましょう。
- 安定した継続収入の見込みがない
- 任意整理や個人再生は、手続き後に分割で返済を続けることが前提です。無職であったり、収入が著しく不安定であったりすると、返済計画の履行が困難と判断され、手続きの利用が難しくなります。
- 借金の総額が極端に少ない、または多すぎる
- 借金額が少なすぎる場合、専門家費用を考慮すると債務整理のメリットが薄いことがあります。
- 個人再生では、住宅ローンを除く借金総額が5,000万円を超えると利用できません。
- 非免責債権(税金、養育費など)の割合が多い
- 税金や社会保険料、養育費、罰金などは、自己破産をしても支払い義務が免除されません。これらの支払いが多い場合、債務整理をしても負担があまり軽減されない可能性があります。
- 過去の債務整理から一定期間が経過していない
- 自己破産の免責許可から7年以内、個人再生の給与所得者等再生やハードシップ免責から7年以内は、原則として再度の自己破産はできません。
- 債権者が交渉に全く応じない(任意整理の場合)
- 任意整理は債権者との合意が不可欠です。業者の方針や取引状況により、交渉に応じてもらえない、あるいは極めて厳しい条件しか提示されない場合は、任意整理による解決は困難です。
- 借金に保証人や担保がついている(任意整理の場合)
- 整理対象の借金に保証人がいる場合、保証人に請求がいきます。また、担保付きの借金を整理すると担保物が処分されるため、これらを避けたい場合は任意整理の対象としづらくなります。
- 生活保護受給中である
- 生活保護費を借金返済に充てることは原則として認められていないため、任意整理や個人再生は基本的に困難です。自己破産は検討できる場合があります。
- 給料差押えを受けている(任意整理の場合)
- 債権者がすでに給料差押えという強力な回収手段を確保している場合、任意整理の交渉に応じてくれる可能性は低いです。
- 免責不許可事由に該当する(自己破産の場合)
- ギャンブルや浪費による借金、財産隠し、虚偽の申告など、破産法で定められた免責不許可事由がある場合、原則として自己破産による免責は受けられません(裁量免責の可能性はあります)。
- 個人再生の要件を満たせない
- 例えば、小規模個人再生で債権者の多数が反対した場合や、再生計画の履行可能性が低いと判断された場合などです。
- 手続きへの非協力的な態度
- 裁判所や専門家に対して虚偽の説明をしたり、必要な書類を提出しなかったりすると、手続きを進めることができなくなります。
- 弁済原資を確保できない(個人再生の場合)
- 減額されたとしても、その後の返済原資を捻出できなければ、個人再生の計画は成り立ちません。
- 保有財産が多すぎる(個人再生の場合)
- 清算価値保障原則により、保有財産が多いと弁済額も高額になり、個人再生のメリットが薄れるか、返済が困難になることがあります。
- 借入開始時期が新しすぎる、または返済実績がない(任意整理の場合)
- 債権者から見て、返済意思がないと判断されやすく、交渉が難航する傾向にあります。
これらの条件に一つでも当てはまるからといって、必ずしも全ての道が閉ざされるわけではありません。
例えば、任意整理が難しくても個人再生や自己破産は可能であるケースや、逆に自己破産は避けたいが任意整理なら進められるといったケースも存在します。
また、専門家のアドバイスを受けながら生活状況を改善することで、以前は難しかった手続きが利用できるようになることもあります。
ご自身の状況を正確に把握し、どのような選択肢があるのか、どの方法が最も適しているのかを知るためには、やはり債務整理に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談することが最も確実な方法です。
一人で悩まず、まずは専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
債務整理ができない場合の主な解決策の方向性
- 任意整理が難しい場合:
- 交渉に応じてくれない業者を除いて任意整理する
- 実績のある他の弁護士・司法書士に再度依頼してみる
- 自己破産や個人再生など他の手続きを検討する
- 自己破産が難しい(免責不許可事由など)場合:
- 管財事件として手続きを進め、裁量免責を目指す
- 個人再生など他の手続きを検討する
- 個人再生が難しい場合:
- 小規模個人再生と給与所得者等再生で、利用できる方を選択する
- 自己破産など他の手続きを検討する
繰り返しになりますが、どのような状況であっても、まずは専門家へ相談することが、解決への最も重要な一歩となります。
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