最近、社長や役員になりすましたメールをきっかけに、多額の現金を騙し取られる被害が相次いでいます。
こうした社長のメールによる詐欺はビジネスメール詐欺の一種として知られていますが、その手口は日々巧妙さを増しており、決して人ごとではありません。
実際にどのような事例があるのか、そしてどのような対策を立てれば会社を守れるのか、不安を感じている方も多いはずです。
ネット上ではLINE誘導を組み合わせた手口や、急ぎの送金を求めるケースが多く報告されています。
この記事では、最新の被害実態や専門機関の注意喚起を整理し、不審な連絡を見抜くためのポイントをまとめました。
正しい知識を持つことが、大切な資産を守る第一歩になります。
記事のポイント
- 札幌や岐阜で実際に発生した高額被害の生々しい実態
- メールからSNSグループへ誘導される最新の詐欺プロセス
- 銀行や商工会議所が警告する不審な連絡の見分け方
- 被害を未然に防ぐために社内で徹底すべき確認ルール
実際に起きた社長のメール詐欺事件を詳しく解説

日本国内で発生している社長を騙る詐欺事件は、一社あたりの被害額が非常に大きいのが特徴です。
まずは、実際にどのような状況で事件が起きてしまったのか、その生々しい詳細を見ていきましょう。
札幌で発生した社長メール詐欺の巧妙な手口
2026年1月5日、北海道札幌市内の会社において8,000万円という巨額の詐欺被害が発生しました。
この事件で特筆すべきは、犯人が社長の「不在時」を正確に把握していたかのように動いている点です。
犯人は社長の名前を騙ったSNSアカウントを作成し、社員に対して直接連絡を取りました。
最初は業務上の何気ない連絡を装い、次第に「法人口座の残高を教えてほしい」と具体的な情報を求め始めます。
指示を信じた社員は、言われるがままにグループチャットを作成し、そこに口座残高などの機密情報を書き込んでしまいました。
犯人は相手の支払い能力を確認した上で、一気に送金指示へと踏み切ったのです。
ここが巧妙な罠:
犯人は「社長本人」になりすますだけでなく、「社内で普段使っている連絡経路とは別のSNS」へ誘導することで、他の社員や上席者の目に触れにくい環境を作り出しました。
社長メール詐欺で8000万円が送金された背景
この札幌の事件では、最終的に合計8,000万円が指定された2つの口座に振り込まれました。
内訳は3,000万円と5,000万円だったと報じられています。
なぜ、これほど高額な送金が実行されてしまったのでしょうか。
そこには「社長からの直接の指示」という重圧がありました。
犯人はSNS上で「至急対応が必要だ」と畳みかけ、社員に冷静な判断をさせる時間を与えませんでした。
社員が送金を完了したことを後で社長に報告した際、社長が「そんな指示は出していない」と答えたことでようやく被害が発覚しました。
このように、「完了報告」をするまで誰も気づけないのが、この手口の恐ろしさです。
CBC web / TBS NEWS DIG:突然届いた社長のメールは“詐欺”だった…(2026/01/17)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/2391100?display=1
北海道ニュースUHB:〖サギ速報〗インチキ社長にだまされ8000万が消えた!…(2026/01/06)
https://www.uhb.jp/news/single.html?id=56429
岐阜で1億円を搾取した社長メール詐欺の実態
岐阜県多治見市で発生したこの事件は、国内で発生しているビジネスメール詐欺の中でも、特に被害額が大きく、その手口の冷酷さが際立っています。
2026年1月14日に経営者の実名を名乗る偽のメールが会社に届いてから、翌15日に送金が実行されるまで、わずか24時間足らずという驚異的なスピードで1億円もの大金が奪い去られました。
私たちが普段、何気なく利用している「経営者からの直接連絡」という信頼関係を、犯人は最大限に悪用してきます。
プロジェクト対応を口実にした逃げ場のない心理戦
事件の発端は、「新規プロジェクトの対応のためにSNSグループを作成してほしい」という、一見すると前向きな業務指示でした。
実在する経営者の名前で送られてきたこのメールに対し、従業員は一切の疑いを持たずに指示に従ってしまいます。
グループ作成後、犯人は待機していたかのように「直ちに1億円を振り込んで」と非常に強い語気で送金を迫りました。
この「至急」というキーワードが、担当者に冷静な確認をさせる時間を与えず、正常な判断力を奪ってしまうのです。
経理担当者が指示通りに1億円を指定口座へ送金した後、犯人はさらなる暴挙に出ます。
なんと、間髪入れずに「追加で4,800万円の振込が必要になった」という二度目の要求を突きつけたのです。
この飽くなき強欲さが、結果として現場の違和感を呼び起こし、直接本人へ確認したことでようやく被害が発覚しました。
岐阜県警の発表によれば、県内では同様の手口による被害が相次いでおり、これら3件の被害総額は2億5,000万円に達しているという衝撃的なデータも明らかになっています。
多治見市の事件に見る被害のポイント:
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発生場所 | 岐阜県多治見市 |
| 初動の被害額 | 1億円 |
| 追加入金要求 | 4,800万円 |
| 悪用された経路 | メールからSNSグループへ誘導 |
岐阜新聞デジタル:ニセ社長詐欺、1億円被害 多治見市の会社役員、メール発端(2026/01/16)
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/654578
名古屋テレビ:…「ビジネスメール詐欺」で1億円被害 岐阜・多治見市の会社(2026/01/16)
https://www.nagoyatv.com/news/?id=033799
東海テレビ:…詐欺メールをきっかけに会社が1億円騙し取られる…(2026/01/16)
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20260116_44319
社長メール詐欺の被害額が5億円超の理由
私たちが今、最も警戒しなければならないのは、警察庁が明かした驚愕の被害データです。
2025年12月中旬からわずか1か月間という極めて短期間のうちに、全国で発生したビジネスメール詐欺による被害総額は、すでに5億円を超える甚大な被害に達しています。
なぜ、これほどまでに短期間で巨額の資金が奪われてしまったのでしょうか。
そこには、従来の「下手な鉄砲も数撃てば当たる」といったバラマキ型の迷惑メールとは一線を画す、恐ろしい背景が隠されています。
組織を狙い撃ちにする標的型攻撃の進化
被害が急増している最大の理由は、犯人側の準備の高度化にあります。
犯人グループは、ターゲットとする企業の組織図や役職者の実名、さらには過去のプレスリリースなどを徹底的に精査し、誰が誰に対して指示を出す立場にあるのかを完璧に把握した上で攻撃を仕掛けてきます。
以前であれば、不自然な日本語によって「これは詐欺だ」と気づけるケースも多かったのですが、現在はAIなどを駆使した自然な日本語による文面作成が可能となり、社内の人間が読んでも違和感を抱かないレベルにまで達しているのです。
さらに、年末年始という多忙な時期や、社長が不在になりがちなタイミングをピンポイントで狙う「時間的な戦略」も、被害額を跳ね上げた要因の一つと言えるでしょう。
実際に報告されている主な被害事例を、分かりやすく一覧にまとめました。
直近で確認された高額被害の状況
| 被害発生エリア | 被害金額(報道ベース) | 主な接触・誘導経路 |
|---|---|---|
| 北海道札幌市 | 8,000万円 | 社長なりすましSNSアカウント |
| 岐阜県多治見市 | 1億円 | メールからSNSグループへ誘導 |
| 全国合計(直近1ヶ月) | 5億円以上 | ビジネスメール詐欺全般 |
警察庁サイバー警察局では、こうした「ビジネスメール詐欺(BEC)」の脅威から会社を守るために、システムの脆弱性対策だけでなく、二要素認証の徹底や、重要な送金指示があった際のリターン・コール(既知の電話番号への掛け直し)といった、多面的な本人確認を強く推奨しています。
一度振り込んでしまった資金は、即座に海外口座や暗号資産へと流れてしまうため、水際での阻止が何よりも重要です。
(出典:警察庁サイバー警察局ホームページ)
急増する社長のメール詐欺の手口を詳しく解説

被害が拡大する一方で、多くの金融機関や団体が具体的な防衛策を提示しています。
私たちは、どのようなポイントに注意を払えば良いのでしょうか。
実務に即した対策を掘り下げます。
銀行が警告する社長メール詐欺の3つの類型
琉球銀行や秋田銀行、大光銀行といった各金融機関の注意喚起を統合すると、詐欺の手口は主に以下の3つのパターンに集約されます。
これらに一つでも当てはまる場合は、詐欺を疑うべきです。
- 外部SNSへの誘導:「LINEでグループを作ってほしい」「QRコードを送るから参加して」といった、社内公式ツール以外への誘導。
- 時間的プレッシャー:「本日中」「今すぐ」「極秘プロジェクト」など、相談する時間を奪い、至急の送金を求める。
- 巧妙ななりすまし:正規のメールアドレスと1文字だけ違うドメイン(例:.co.jp が .co-jp になっている等)の使用。
特に銀行口座の情報やログインパスワード、ワンタイムパスワードなどを聞き出そうとする動きがあれば、それは間違いなく詐欺です。
社長メール詐欺に騙されないための確認手順
不審なメールが届いた際、最も確実な防衛策は「メールとは別の経路で本人に確認する」ことです。
メールで送金指示が来たのであれば、メールで返信するのではなく、以前から知っている本人の電話番号に直接電話をかけるか、社内の内線電話を使用して対話で確認してください。
実務でのチェックリスト:
- 差出人のメールアドレスをマウスオーバーして、表示される実際のアドレスを確認する
- 指示された振込先が、過去に取引実績のある正規の口座か確認する
- 「至急」と言われても、必ず同僚や上司に相談し、ダブルチェックを行う
不審な指示を疑うべき社長メール詐欺の共通点
犯人の文面には、特有の言い回しが存在します。
東邦銀行が公開している典型例によれば、「手続きは後回しで構いません。
戻ったら説明します」といった、正規の決裁ルートを無視させるような言葉が使われます。
また、「これは極秘事項なので、他の社員には口外しないように」と、周囲への相談を封じようとするのも典型的なパターンです。
さらに、指示の矛先が「法人口座の残高確認」から始まることも共通しています。
残高を確認させることで、犯人は「いくらまでなら引き出せるか」を計算しているのです。
不自然な残高照会の指示があった時点で、警戒レベルを最大に引き上げる必要があります。
商工会議所も注意を促す社長メール詐欺の実例
企業のトップだけでなく、地域団体の役職者を名乗るケースも増えています。
倉敷商工会議所では、会頭の名前を騙り、LINEグループへの参加を促す不審なメールが確認されました。
犯人は公的な立場を利用して信頼を得ようとしますが、商工会議所のような団体が、個別の企業の社員に対してLINEグループへの参加を強要することはありません。
こうした事案は「実在する組織・人物」の名前を使っているため、受診した側は「会頭からの指示なら……」と信じ込んでしまうリスクがあります。
団体名や役職名が出てきたとしても、その依頼内容が一般的ではない場合は、即座に公式サイト等で公開されている窓口へ確認の連絡を入れるべきです。
琉球銀行:「社長」や「役員」になりすました詐欺メールにご注意ください(2026/01/08)
https://www.ryugin.co.jp/91429/
秋田銀行:「社長」「役員」になりすました詐欺メールにご注意ください(2026/01/15)
https://www.akita-bank.co.jp/info/detail?id=3327
大光銀行:経営者等になりすましたビジネスメール詐欺にご注意ください(2026/01/13)
https://www.taikobank.jp/important/detail.php?sn=2076
東邦銀行(PDF):企業の「社長・役員」に成りすました詐欺メールにご注意ください!(2026/01/06)
https://www.tohobank.co.jp/cms_source/data/important/files/20260106.pdf
倉敷商工会議所:〖注意喚起〗社長・経営者なりすまし詐欺…にご注意ください(2026/01/16)
https://www.kura-cci.or.jp/post-21979/
総括:社長のメール詐欺被害を防ぐための重要事項まとめ

社長のメールを装った詐欺は、単なる技術的なサイバー攻撃ではなく、人間の心理を巧みに突いた「ソーシャルエンジニアリング」の手法です。
私たちは、たとえ社長本人からの指示に見えても、それが「通常とは異なる経路」や「異常な急ぎ案件」である場合には、勇気を持って立ち止まらなければなりません。
今回ご紹介した事例や数値は、あくまでも報道や公表資料に基づく現状の目安です。
犯人の手口は日々進化しており、明日には全く新しい手法が現れるかもしれません。
正確かつ最新の情報については、必ず警察庁のホームページや、ご利用の金融機関が発信している公式情報を確認してください。
最終的な送金の判断や、自社のセキュリティ体制の構築については、サイバー犯罪に詳しい弁護士や専門のコンサルタントに相談することを強くお勧めします。
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社員一人ひとりのリテラシー向上が、何よりの防衛策であることを忘れないでください。
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