「自己破産」と聞くと、少し重たい響きがありますよね。
借金問題に直面していると、「自己破産メリット・デメリット」というキーワードで検索することも増えると思います。
私も調べてみたのですが、自己破産には当然ながら良い面と悪い面があります。
例えば、自己破産後の生活はどうなるのか、家族への影響は避けられないのか、車や持ち家は手放すしかないのか、といった不安は尽きません。
また、会社にバレるのではないか、ブラックリストに載るとどうなるのか、弁護士に頼む費用はいくらかかるのか…など、知りたいことは山積みです。
この記事では、私が調べた自己破産のメリットやデメリットについて、できるだけ分かりやすくまとめてみました。
法的な最終手段とも言われますが、まずは正しい知識を持つことが大切だと思います。
一緒に見ていきましょう。
記事のポイント
- 自己破産で得られる最大のメリット
- 知っておくべきデメリットと生活への影響
- 自己破産の手続きの流れと費用(目安)
- 自己破産を検討する際の注意点
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自己破産メリット・デメリット【メリット編】

まずは、自己破産の「メリット」について見ていきましょう。
やはり一番大きな利点は、借金の返済に追われる日々から解放され、経済的・精神的なプレッシャーから解放されることにあるようです。
具体的にどのようなメリットがあるのか、私が調べた範囲で詳しくご紹介します。
借金がゼロになる最大の利点

自己破産の最大のメリットは、何と言っても裁判所から「免責許可決定」が下りれば、原則として全ての借金の支払い義務がなくなることです。
消費者金融からの借り入れ、銀行のカードローン、クレジットカードのリボ払いや分割払いの残高、友人・知人からの借金など、その時点で抱えているほとんどの債務が対象になります。
どれだけ高額な借金を抱えていても、法的に返済する必要がなくなるというのは、精神的にも経済的にも、まさに人生をリセットするほどの大きな救済措置ですよね。
ただし、この「原則として」という点が重要で、全ての債務が対象となるわけではありません。
「非免責債権(ひめんせきさいけん)」と呼ばれる特定の債務は、自己破産をしても免除されません。
非免責債権(免除されないもの)とは?
非免責債権とは、政策的な理由や公平性の観点から、自己破産の手続きを経ても支払い義務が免除されない債権のことを指します。
主な例は以下の通りです。
- 税金・公租公課(住民税、所得税、固定資産税、自動車税など)
- 社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料など)
- 養育費や婚姻費用(夫婦間の生活費の分担費用など)
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金(詐欺や横領などで得たお金に対する賠償など)
- 故意または重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償金(飲酒運転による人身事故の賠償金など)
- 罰金・科料など
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権
このように、税金や養育費などは自己破産をしても支払い義務が残るため、この点はしっかり理解しておく必要があります。
(出典:e-Gov法令検索「破産法」)
債権者からの取り立てが止まる

弁護士に自己破産の手続きを正式に依頼すると、専門家は各債権者(お金を貸している消費者金融やクレジットカード会社など)に対して「受任通知(介入通知)」という書類を送付します。
この通知が債権者に届いた時点で、貸金業法という法律に基づき、債権者は債務者本人に対して電話、訪問などによる直接の取り立てや督促を行うことが固く禁止されます。
借金問題で精神的に追い詰められる大きな原因の一つが、鳴り止まない督促の電話や、ポストに届く督促状だと思います。
これが法的にピタッと止まるだけでも、精神的な負担は計り知れないほど軽減されるはずです。
この「平穏な時間」を得られることで、初めて落ち着いて生活の再建を考えるスタートラインに立てると言えそうです。
強制執行がなくなる安心感

借金の返済を長期間滞納していると、債権者は裁判所に申し立てて、給与や預金口座、その他の財産を強制的に差し押さえる「強制執行」の手続きを取ることがあります。
特に「給与差し押さえ」は影響が大きく、勤務先に裁判所から通知が届くため、借金問題を知られてしまう可能性が非常に高くなります。
また、手取り給与の一部(原則4分の1まで)が天引きされるため、ますます生活が苦しくなってしまいます。
自己破産の手続きを裁判所に申し立て、「破産手続開始決定」が出ると、すでに行われている強制執行は停止され、まだ行われていない新たな強制執行も禁止されます。
「いつ給料が差し押さえられるか」という不安から解放されるのも、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
生活に必要な財産は残せる

「自己破産=全財産没収」「身ぐるみはがされる」というような、非常に厳しいイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実はこれは誤解です。
破産法では、破産した人が手続き後に最低限の生活を送り、経済的に再スタートできるように、法律で「自由財産」として認められている一定の財産は手元に残すことが認められています。
手元に残せる「自由財産」の具体的な範囲
どの範囲までが自由財産として認められるかは、裁判所の運用によっても異なりますが、主なものは以下の通りです。
- 99万円以下の現金これは「預貯金」とは別カウントの「手持ちの現金(タンス預金など)」を指します
- 差押禁止財産法律で差し押さえが禁止されている財産です,具体的には、生活に必要不可欠な家具、家電、衣類、寝具などのほか、年金受給権や生活保護受給権などもこれにあたります
- 破産手続開始決定後に得た財産(新得財産)手続きが始まってから稼いだ給料や、受け取った仕送りなどは、原則として自由に使えます。
- その他(裁判所の運用によるもの)例えば、東京地方裁判所の運用では、残高が20万円以下の預貯金口座、見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金、査定額が20万円以下の自動車なども、処分の対象外(=手元に残せる)となることが多いようです
また、これら以外にも、生活状況や地域の特性(車がないと生活が成り立たない地域など)に応じて、裁判所に「自由財産の拡張」を申し立て、認められれば手元に残せるケースもあります。
テレビや冷蔵庫が全て持っていかれるわけではないので、手続き後すぐに生活に困窮するということはないようです。
自己破産後の生活の再スタート

免責許可が確定すれば、税金などの一部を除いて借金はゼロになります。
これまでは収入のほとんどが返済に消えていた日々から一転し、得た収入を自分の生活費、家族のための費用、あるいは将来のための貯蓄に使えるようになります。
もちろん、後述する様々なデメリット(特に信用情報に関するもの)は受け入れなければなりません。
しかし、借金という重く、終わりの見えないプレッシャーから法的に解放され、経済的にも精神的にも「人生をもう一度やり直すチャンス(スタートライン)」に立てる。
これが自己破産という制度の本来の目的なのだと、私は理解しています。

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自己破産メリット・デメリット【デメリット編】

メリットがあれば、当然デメリットもあります。
自己破産は良いことばかりではありません。
むしろ、こちらのデメリットを正しく理解し、それを受け入れられるかどうかを判断することが非常に重要です。
私が特に気になった点を詳しくまとめました。
自己破産で車や持ち家はどうなる?

多くの方が最も心配されるのが、マイホームや車などの大きな財産だと思います。
自己破産の手続きには、財産がほとんどない場合の「同時廃止」と、一定以上の財産がある場合や調査が必要な「管財事件」があります。
価値のある財産を持っている場合、原則として「管財事件」となり、それらの財産は裁判所が選任する「破産管財人」によって処分(換価)され、債権者への配当に充てられます。
持ち家(不動産)の場合
持ち家は、ほぼ100%処分対象となります。
土地や建物の価値は、通常99万円の現金や20万円の預貯金といった基準をはるかに超えるためです。
これは住宅ローンが残っていても、完済していても同じです。
ローンが残っている場合は、抵当権を持つ金融機関が競売にかけるか、任意売却という形で処分されます。
同居している家族がいる場合は、当然ながらその家に住み続けることはできなくなり、引っ越しを余儀なくされるため、生活への影響は非常に大きいです。
車(自動車)の場合
車については、その「価値」と「ローンの状況」によって扱いが変わります。
- ローンを完済している場合:車の時価(査定額)が基準となります,一般的な目安として、査定額が20万円を超える場合は処分対象となることが多いようです。逆に、年式が古い車や走行距離が多い車で、価値が20万円以下と判断されれば、手元に残せる可能性が高いです
- ローンが残っている場合:自動車ローンでは、完済するまで車の所有権がローン会社やディーラーにある「所有権留保」という契約になっていることが大半です,この場合、自己破産の手続きを開始すると、ローン会社は契約に基づき車を引き揚げてしまいます。価値が20万円以下であっても、原則として手元には残りません
ただし、これらの基準はあくまで一般的な目安であり、裁判所の運用や地域によって異なる場合があります。
「どうしても通勤や介護で車が必要」といった個別の事情がある場合、破産管財人や裁判所との交渉(自由財産の拡張)次第で例外が認められるケースもゼロではないようですが、基本的には価値のある財産は失うと考えた方が良さそうです。
ブラックリスト掲載と信用情報

自己破産をすると、信用情報機関(個人のクレジットやローンの契約内容・返済状況を管理する機関)に「事故情報」として登録されます。
これが、俗に「ブラックリストに載る」という状態です。
日本には主に以下の3つの信用情報機関があり、金融機関はこれら機関の情報を共有しています。
- CIC(主にクレジットカード会社、信販会社が加盟)
- JICC(主に消費者金融会社が加盟)
- KSC(全国銀行協会。主に銀行が加盟)
この事故情報が登録されている間は、金融機関からの信用がゼロになるため、以下のようなことが原則としてできなくなります。
- クレジットカードの新規作成、および現在持っているカードの利用・更新
- 新たなローン契約全般(住宅ローン、自動車ローン、カードローン、教育ローンなど)
- キャッシング(現金の借り入れ)
- 他人の借金の保証人・連帯保証人になること
登録期間は機関によっても異なりますが、自己破産の手続き終了(免責許可決定)から約5年~7年程度と言われています。
この期間は、現金中心の生活を送る覚悟が必要になります。
ブラックリスト期間中の生活への影響
クレジットカードが使えないと不便に感じる場面もありますが、代替手段はあります。
- デビットカード:銀行口座から即時引き落とされるカード,審査なしで持てるため、ネットショッピングなどでクレジットカード代わりに使えます
- プリペイドカード、QRコード決済:事前に入金(チャージ)した分だけ使えます
- ETCカード:「ETCパーソナルカード」など、デポジット(保証金)を預けることで作れるETCカードもあります
- スマートフォンの購入:端末代金の分割払い(割賦契約)は審査があるため難しくなります,一括払いでの購入か、中古端末の利用などを検討する必要があります
自己破産による家族への影響は?

「自分一人の問題ならまだしも、家族にまで迷惑が…」と心配される方は非常に多いです。
大原則として、自己破産はあくまで個人の手続きです。
そのため、あなたが自己破産しても、法的には家族があなたの借金を肩代わりする義務は一切ありません。
また、家族自身の信用情報に傷がつくこともありませんし、家族が就職や結婚で不利になることもありません。
しかし、法律上の責任はなくても、「間接的な影響」は避けられないのが実情です。
直接的な影響(例外)
- 家族が「保証人」になっている場合:これは唯一の、そして最大の直接的影響です,あなたが免責されても保証人の義務はなくならないため、債権者は保証人である家族に請求します。詳しくは次項で解説します
間接的な影響(生活面)
- 持ち家を失う:前述の通り、持ち家(本人名義)が処分されれば、同居している家族全員が引っ越す必要があります,お子さんの転校などが必要になる場合もあります
- 家族カードの失効:あなたが契約者(本会員)であるクレジットカードに紐づく「家族カード」は、本会員のカードが停止されると同時に使えなくなります
- 保険の解約:あなたが契約者である学資保険や生命保険などで、解約返戻金が20万円を超える場合は、処分(解約)対象となる可能性があります
- 家族名義の財産:原則として家族名義の財産(配偶者の預金など)は処分の対象外です,ただし、実質的にはあなたの財産(名義を借りただけ)と判断された場合は、処分対象となるリスクがあります
自己破産は会社にバレる?

「会社に知られてクビになるのではないか」「職場にいづらくなるのではないか」という不安も大きいですよね。
まず大前提として、自己破産を理由に従業員を解雇することは、客観的に合理的な理由を欠く不当解雇として、法律上認められていません。
次に「バレるか、バレないか」ですが、あなたが自分から言わなければ、会社に知られる可能性は低いです。
弁護士や裁判所から会社に「この従業員は自己破産します」といった連絡がいくことは、原則としてありません。
ただし、以下のような例外的なケースでは、会社に知られる可能性があります。
会社に知られる可能性があるケース
- 会社(や共済組合)から借金をしている場合:会社も「債権者」の一人となるため、弁護士からの受任通知や裁判所からの通知が会社に届き、手続きの事実が知られます
- 給与の差し押さえが既に行われている場合:自己破産手続きの開始で差し押さえは止まりますが、その手続き(停止の通知など)の過程で、経理担当者などに知られる可能性があります
- 一部の職業に就いている場合(資格制限):自己破産の手続き中(開始決定から免責決定まで)は、一時的に就けない職業があります,例えば、弁護士・司法書士などの士業、警備員、生命保険募集人、宅地建物取引士などです,これらの職業に就いている場合、一時的に業務から外れる必要があり、会社に報告せざるを得ません。免責されれば復権(元に戻る)します
- 官報をチェックされた場合:非常に稀なケースですが、会社の業務(金融機関の与信部門、一部の人事部門など)で官報を日常的に確認している場合は、知られるリスクがあります
保証人への影響と対処法

これがデメリットの中でも特に深刻で、人間関係に大きな影響を与える問題かもしれません。
もし、あなたの借金(奨学金、銀行ローン、事業資金など)に「保証人」や「連帯保証人」(例えば、親御さん、ご兄弟、ご友人など)が設定されている場合、重大な影響が出ます。
あなたが自己破産して免責許可決定を受け、借金の返済義務がなくなっても、保証人・連帯保証人の返済義務はなくなりません。
それどころか、債権者はあなたに請求できなくなった分を、全額、保証人・連帯保証人に請求します。
特に「連帯保証人」の場合は、残額の一括返済を求められることが一般的です。
保証人への影響と対処法
保証人がその請求額(例えば数百万円)を一括で支払えない場合、保証人自身も債務整理や自己破産を検討しなければならない事態に陥る可能性があります。
まさに「連鎖破産」です。
自己破産を検討する段階で、保証人の存在を隠すことは絶対にしてはいけません。
必ず弁護士に正直に伝え、どのような影響が出るか、どう対処すべきかを相談することが不可欠です。
弁護士は、保証人への影響を最小限に抑えるため、事前に保証人に連絡を取り、保証人自身も債務整理が必要かどうかを含めて対応を協議してくれる場合が多いです。
誠実に対応することが、人間関係の破綻を防ぐ唯一の道と言えます。
官報掲載の事実と周囲への影響

自己破産をすると、裁判所の手続きの一環として、「官報(かんぽう)」という国の機関紙(新聞のようなもの)に、あなたの住所と氏名が掲載されます。
掲載されるタイミングは、主に「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回です。
官報は現在、インターネットでも閲覧が可能です。
「国のお知らせに名前が載るなんて、全世界に知られてしまう…」と不安になるかもしれませんが、官報を日常的に購読・チェックしている一般の人はほとんどいません。
あなたの近所の人や友人が官報を見て自己破産の事実を知る、という可能性は極めて低いと言われています。
ただし、以下のような特定の人は官報をチェックしている可能性があります。
- 金融機関(銀行、消費者金融など)の与信担当者
- 信用情報機関
- 市町村役場の税金担当者(非免責債権の確認のため)
- 一部の士業(弁護士、司法書士など)
- 警備会社や保険会社(資格制限の確認のため)
- ヤミ金業者(ダイレクトメールを送るため)
会社にバレるリスクと同様、一般の人間関係において過度に心配する必要はないかもしれませんが、情報が公になること自体は事実であり、ゼロリスクではない、という点は知っておくべきデメリットです。

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自己破産メリット・デメリットと手続き

メリットとデメリットを見てきましたが、では「自分も自己破産できるのだろうか?」
「実際にどうやって進めるのか?」という手続きに関する疑問についても、私が調べたことをまとめます。
この手続きこそが、一番のハードルかもしれません。
自己破産ができない条件とは?

自己破産は、借金で苦しんでいれば誰でも無条件に認められる、というわけではありません。
裁判所が判断する上で、主に2つの大きなハードルがあります。
1. 支払い不能状態であること
まず、裁判所に「この人はもう返済できる状態ではない(=支払い不能)」と客観的に認めてもらう必要があります。
これは、単に「生活が苦しい」「返済がキツイ」という主観的な感覚ではなく、債務者(あなた)の年齢、職業、収入、資産、そして負債総額や内容を総合的に見て、「将来にわたって継続的に返済していくことが著しく困難である」と判断される必要がある、ということです。
収入が安定していて、借金額が比較的少額であれば、自己破産ではなく他の方法(任意整理や個人再生)を勧められることになります。
2. 免責不許可事由に該当しないこと
これが非常に重要です。
たとえ「支払い不能」状態であっても、借金を作った原因や手続き中の行動によっては、「免責(借金をゼロにすること)を許可するに値しない理由」=「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」に該当すると判断される場合があります。
免責不許可事由の主な例
- 浪費やギャンブルが「主な」原因である場合(収入に見合わないブランド品の購入、パチンコ・競馬、FXや仮想通貨への投機、風俗通いなどが該当します)
- 財産を意図的に隠したり、壊したり、価値を下げたりした場合(預金口座を申告しない、車をタダ同然で友人に譲る、など)
- 特定の債権者だけ(例えば友人や親戚だけ)に優先して返済した場合(偏頗弁済:へんぱべんさい)(債権者平等の原則に反するため)
- 裁判所や破産管財人(手続きを手伝う人)に嘘の説明をしたり、調査に協力しなかったりした場合
- 信用取引による詐術(返済できないとわかっているのに、それを隠して新たにお金を借りたり、クレジットカードで高額な買い物をしたりすること)
- 過去7年以内に自己破産の免責を受けている場合
ただし、ここで希望を捨ててはいけません。
「裁量免責」という救済措置
たとえギャンブルや浪費が原因であっても、裁判官が「即アウト」と判断するわけではありません。
破産法には「裁量免責(さいりょうめんせき)」という制度があります。
これは、免責不許可事由に該当する事実があったとしても、裁判官が諸事情(借金に至った経緯、本人の反省の度合い、手続きへの協力姿勢、更生の可能性など)を総合的に考慮して、「免責を許可するのが相当である」と判断すれば、免責を許可できるという制度です。
実際には、ギャンブルや浪費が原因の自己破産であっても、弁護士の指導のもと、本人が深く反省し、手続きに誠実に協力すれば、この裁量免責によって免責が認められるケースが非常に多いようです。
自己破産の手続きと流れを解説

自己破産の手続きは非常に複雑で、裁判所を介するため、専門的な知識が不可欠です。
一般的には弁護士などの専門家に依頼して進めます。
手続きの期間は、内容によって大きく変わります。
大まかな流れは以下のようになります。
- 専門家(弁護士など)へ相談・依頼(借金の状況、財産、収入などを全て正直に話します)
- 受任通知の送付(専門家が債権者に通知を発送。この時点で督促・返済がストップします)
- 必要書類の準備・申立書の作成(住民票、給与明細、預金通帳のコピー(過去1~2年分)、家計簿など、大量の書類を集めて申立書を作成します)
- 地方裁判所へ自己破産の申立て(弁護士費用や裁判所費用の積立が完了次第、申し立てます)
- 破産審尋(裁判官との面談)(申立内容について裁判官から質問されます。弁護士も同席します。※省略される場合もあり)
- 破産手続開始決定(ここで手続きが正式にスタート。同時に「同時廃止」か「管財事件」かが決まります)
- (管財事件の場合)破産管財人による財産の調査・換価(管財人が財産を現金化し、債権者への配当準備をします。免責不許可事由の調査も行います)
- (管財事件の場合)債権者集会(裁判所で、管財人が債権者に対し、調査結果や配当見込みを報告します。本人も出席します)
- 免責審尋(裁判官との面談)(「本当に免責してよいか」を最終確認する面談。管財事件では債権者集会と同時に行われることも多いです)
- 免責許可決定(または不許可決定)(問題がなければ、ここで正式に借金がゼロになります)
「同時廃止事件」と「管財事件」の違い
ステップ6で決まるこの2つの違いが、期間と費用に大きく影響します。
- 同時廃止事件:申し立ての時点で、債権者に配当できるほどのまとまった財産(目安として20万円以上の価値のもの)がなく、かつ免責不許可事由の調査も特に必要ないと判断された場合の簡易的な手続きです,財産調査が不要なため、手続き開始と「同時」に手続きが「廃止(終了)」します【期間目安】約3~6ヶ月
- 管財事件(少額管財):一定以上の財産(持ち家や価値のある車など)がある場合、またはギャンブルや浪費などの免責不許可事由の調査が必要な場合の手続きです,裁判所が「破産管財人」(通常は弁護士)を選任し、財産調査・処分や免責に関する調査を行います,その分、手続きは長く、費用も高くなります,(※弁護士が代理人につくことで、運用上、費用が抑えられた「少額管財」となるのが一般的です)【期間目安】約6ヶ月~1年程度
自己破産の費用、弁護士の役割
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自己破産には、大きく分けて「裁判所に納める費用」と「専門家に支払う報酬」の2種類がかかります。
自己破産にかかる費用の目安
費用は、上記の「同時廃止」になるか「管財事件」になるかで大きく変わります。
| 費用の種類 | 同時廃止事件(目安) | 管財事件(少額管財)(目安) |
|---|---|---|
| 裁判所費用(予納金など)
(申立手数料、郵券代、官報公告費、管財人引継予納金) |
約1万円 ~ 3万円 | 約22万円 ~
(※予納金20万円が含まれるため高額になる) |
| 弁護士(司法書士)費用
(相談料、着手金、成功報酬など) |
約30万円 ~ 50万円 | 約30万円 ~ 60万円
(※管財事件は手間がかかるため、高くなる傾向) |
| 合計(目安) | 約31万円 ~ 53万円 | 約52万円 ~ |
※上記はあくまで一般的な目安であり、事案の複雑さや法律事務所によって大きく異なります。
弁護士費用の分割払い
「こんな大金払えない」と思うかもしれませんが、多くの法律事務所では費用の分割払いに応じています。
というのも、弁護士に依頼して「受任通知」が送付された時点で、全ての借金の返済が一旦ストップします。
これまで返済に充てていたお金を、そのまま弁護士費用の積立金として(例えば月々3万~5万円ずつ)、申し立てまでに分割で支払う、という方法が一般的なようです。
弁護士の重要な役割
弁護士に依頼するメリットは、単に書類作成や裁判所とのやり取りを代行してくれるだけではありません。
- 債権者対応を全て引き受け、督促を止めてくれる
- 膨大で複雑な申立書類を、裁判所の要求通りに正確に作成してくれる
- 裁判官との面談(審尋)に同席し、法的なサポートをしてくれる
- 費用が高額になる「管財事件」を避け、安価な「同時廃止」で進められるよう、財産状況を法的に整理し、裁判所に的確に主張してくれる
- 免責不許可事由(ギャンブル等)がある場合に、「裁量免責」を得られるよう、反省文の指導や管財人への説明など、専門家として最大限の弁護活動を行ってくれる
これらの専門的なサポートが、手続きの成否を大きく左右すると言えます。
自分で自己破産はできる?

法律上、弁護士や司法書士に依頼せず、自分で(本人申立て)自己破産の手続きをすることも可能です。
そうすれば弁護士費用は節約できます。
しかし、私はこの方法を調べれば調べるほど、絶対におすすめできないと感じました。
理由は以下の通りです。
- 書類の不備で失敗するリスク提出する書類は膨大かつ非常に専門的です,預金通帳の全履歴、家計簿、財産目録など、一つでも不備があったり、説明が矛盾していたりすると、裁判所は受け付けてくれないか、手続きが大幅に遅延します
- 精神的負担が大きすぎる受任通知がないため、裁判所に申し立てて「開始決定」が出るまでの間、債権者からの督促は止まりません,督促に怯えながら、一人で複雑な書類を作成し、裁判所とやり取りするのは精神的に非常に困難です
- 免責不許可のリスク免責不許可事由がある場合、法的な知識なしで「裁量免責」を得るのは極めて困難です
最大の落とし穴:「管財事件」になりやすい
最も注意すべきは、弁護士が代理人についていない「本人申立て」の場合、裁判所は財産調査や免責不許可事由の調査を慎重に行うため、「管財事件」として扱う可能性が非常に高くなると言われている点です。
弁護士がついていれば、その信用と調査能力によって「同時廃止」で済んだかもしれないケースでも、本人申立てだと「破産管財人を選任して詳しく調べる必要がある」と判断されやすいのです。
その結果、最低でも20万円以上の予納金(管財人報酬)を裁判所に一括で納めるよう命じられます。
弁護士費用を節約しようとした結果、かえって高額な費用が必要になり、その予納金が払えずに申し立て自体を断念する…という最悪のケースも考えられます。
総括:自己破産メリット・デメリットの判断

ここまで自己破産のメリットとデメリット、そして手続きの現実について、私が調べたことをまとめてきました。
結論として、自己破産は「借金を(ほぼ)ゼロにして人生をリセットできる」という他の方法にはない強力なメリットがある一方で、「価値ある財産を失い、一定期間、信用情報に重大な傷がつく」という深刻なデメリットを伴う、まさに表裏一体の最終手段だと感じました。
特に、持ち家や車を失う可能性、そして何よりも保証人になってくれた家族や友人へ与える影響を考えると、安易に決断できるものでは決してありません。
専門家への相談が必須です
この記事で紹介した内容は、あくまで私が調べた一般的な情報や目安に過ぎません。
法律の解釈や裁判所の運用(特に費用の基準や自由財産の範囲)は、個々の事情、お住まいの地域、そして時代の変化によっても異なります。
これは法的な助言ではありません。
もし本当に借金問題で悩んでおり、返済の目処が立たず、自己破産という言葉が頭をよぎるような状況であれば、絶対に一人で判断したり、インターネットの情報だけで結論を出したりせず、まずは債務整理(借金問題)を専門に扱っている弁護士や司法書士の無料相談などを利用してください。
専門家であれば、あなたの状況(借金額、収入、財産、家族構成、借金の原因など)を全て聞いた上で、
- そもそも自己破産が可能なのか?
- デメリットをどう乗り越えるか?
- 自己破産が最適なのか、あるいは「任意整理(将来利息のカット)」や「個人再生(借金の大幅減額とマイホームの維持)」といった他の方法が適しているのか?
あなたの人生にとって最善の道を、法的な根拠に基づいて一緒に考えてくれるはずです。
相談したからといって、必ず依頼しなければならないわけではありません。
まずは正確な「現状把握」のために、専門家の力を借りることが、解決への第一歩だと思います。
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